元福岡県議会員 堀 ひろゆき オフィシャルウェブサイト |最終更新日:2004/05/07|ホームに戻る




耐震構造偽装問題から考える、市場経済の姿

今、社会的に大きな問題となっていることの1つに耐震強度偽装問題があります。この問題は、建築物の安全性を脅かすものであり、そして建築行政の信頼までも揺るがすものであり決して許されるものではありません。
殊に、マンションなどは、サラリーマンがマイホームとして一生の買い物をするものでありの夢と安らぎを打ち砕くものであり言語道断であります。原因の究明と関係者の責任関係の明確化、民事上、刑事上の責任追及、再発の防止を徹底して行わなくてはなりません。
私も11月29日の県の予算の陳情の際、急遽この問題を取り上げ、佐藤国土交通事務次官をはじめ関係各部署に申し入れを行いました。

さて、この問題を通じて考えさせられたのは、大きな言葉で言えば、国家の役割と市場の役割をどう分担していくかということです。

今回の問題点の1つとして、建築確認を民間の指定確認機関が行い見過ごしていたということがあります。
建築確認を民間の指定確認機関に行わせるようになったのは平成11年からです。政府の規制改革会議で議論がなされて実現したものです。従来、国や県、市が行っていた建築確認という事務を民間に開放したからこのようなことが起こったという主張もなされております。こう主張する人たちは、「規制緩和をやりすぎている。再び、建築確認の事務を国や県、市などの公の機関に戻すべきだ。」という可能性もあります。一種の昔への回帰を目指すかもしれません。

「官の役割」と「民の役割」をどこで線を引くのか?両者の役割分担の問題は深い意味合いがあります。
現在は、小泉改革の下、どちらかというと市場経済至上主義という色彩が濃くなっております。欧米などの歴史をみても、(言葉は経済学的にみて正確性を書くかもしれませんが、)「市場経済万能」→「市場の失敗」→「国家の介入による修正」(ケインズ主義などが典型的でしょう。)「国家の失敗」→「市場経済中心」(サッチャー元英国首相やレーガン元米国大統領に代表される小さな政府)という変遷を経てきています。

我が国では、90年代半ばくらいからは特に、グローバリゼーションという国際競争の中をどのようにのりきっていくのかという観点から、「規制改革」「民間開放」「官から民へ」という市場経済至上主義が浸透をしております。
言わずもがなで、わが国は資本主義経済で成り立っております。市場経済を大事にし、小さな政府を志向していくことは当然といえば当然です。
しかし、問題は、どのような市場経済をつくっていくかということです。そこには、ルールを透明にし、公正に競争できる市場を形成していかなくてはなりません。そして、そのルールを逸脱したものには厳格なペナルティーを科していくことです。
こういったところに、国家などの公が果たしていく役割が大きいのだと思います。そして、資本主義市場で活動する企業家や経済人は(もちろんそこで働く人も含めてですが)このルールを遵守していくことが求められます。そして、社会的な規範も守っていくことが求められるのです。
つまり、資本主義市場でプレーをするプレーヤーも高い倫理観をもち、コンプライアンスを確立させていなくてはならないのです。市場経済とは、「儲かりさえすればなんでもやっていい。」というこことは断じて違います。
日本社会に、きちんとした市場経済を創っていくことは、われわれの大きな役割であると思います。


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